I.中国人の今日この頃
1.すれ違う両国民の思い(1月10日掲載)
2.中国との印象的な出会い(1月26日掲載)
3.住宅事情あれこれ (3月9日掲載)
4.お国変わればやり方、考え方も違う
日中では歴史、文化が当然違っているので自ずと慣行や習慣は違っています。日本と中国の関係は昔から同文同種とか一衣帯水と言って関係が深く、文字も顔立ち(人種)も一緒なので考え方、やり方が同じだと日本人は思いがちです。日本企業の幹部が中国に派遣されて、中国人の同僚や部下と起こすトラブルの原因がこの日中は同一だと思い込んで生じる誤解が非常に多く見られます。
例えば、縁起担ぎです。中国人の縁起担ぎは半端ではありません。日本の縁起担ぎも中国から伝わってきたようですが、大分違います。中でも数字での縁起担ぎは結構こだわります。我々が良く知っている例では、北京オリンピックの時でした。開会式の開始時間が、2008年8月8日の夜8時8分8秒でした。何と“8”を6つも並べた拘りようです。開会から式典は延々と続き翌日にまで跨いでいた記憶があります。数字8へのこだわりは日本の末広がりとは違い、8の発音が標準語では“バー”ですが広東語では“ファー”と発音し“発(ファー)財”(金儲け)に通じ縁起が良いようです。昨年自動車のナンバーで8888が深圳でオークションにかかり、何とナンバーだけで15万元(260万円)で落札したというから驚きです。
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写真1,北京のオリンピック競技場(通称鳥の巣) |
その他縁起が良い数では6,7,9で、悪い方では4(死と発音が同じ)、14(発音が要死)、47(死期)などが忌数字です。また、中国の慶事ではお金は偶数、弔辞は奇数となっていますが、日本の奇数主体に比べやはり違っています。私はこの慣習を知らずやや恥をかきました。中国人の部下の結婚式があった時、ご祝儀を切り良く1千元(約17千円)、おめでたい色とされる赤い袋(紅包)に包み渡しましたが拙かったようです。これに80か8元を添えるべきでした。お国変われば習慣も違うものです。
数字以外でも縁起担ぎは沢山あります。その代表例は、日本の中華料理屋などでも見られますが、“福”の字を逆さに飾ったり、冬に”春“の字を逆さに飾ったりします。これは逆さにする意味の”倒“と、やって来ることを意味する”到“が『ダオ』と同じ発音であるため、福がやって来るように、早く春が来るようにと言う願いを込めています。面白いですね。
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写真2 逆さに飾る“福“の意味は? |
生活習慣でみて、食事をオーダーする時は客が食べきれないほど注文するのが中国流です。日本人は残すのは相手に悪いと思い食べつくすと、接待側は注文が足りなかったと理解し追加するか或は面子を失います。最近は習近平体制になってから節約ムードでこういったケースが減っていますが。
その他にも、お礼の仕方は日本では後でお礼ですが、中国では先にお礼が相場のようです。この辺が中国の賄賂の原点かもしれません。上海の復旦大学の私の卒業生が日本での勤務で東京に住み始めてから、ご近所に挨拶代わりにお得意の月餅を配ったら程なくお菓子を戴いたとのこと。折角上げたのに突返されたと理解して相談がありました。そこで日本ではお返しと言う習慣があって、ご祝儀でもお土産でももらうと半返しがあるんだと説明しました。中国では、最初にお礼をすることにより言わば貸を作って、人間関係を持続したいという意図があります。それを別のモノとは言え返されると、これであなたとの貸し借りはなしで縁もなしと解釈してしまいます。
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写真3.優秀な学生が集う復旦大学のツインビル |
また中国では人から何か頼まれた時、ノ―と解っていても少し時間を置いてからノ―と答えます。2012年に野田首相/胡主席会談で尖閣を棚上げしてと胡主席が要請してから、直後に国有化を日本が発表して大規模な反日デモが起きたのは記憶に新しい事件でした。内容が起こるべくして起こった部分はあるにせよ、中国の慣習からしてもあり得ないし、胡主席の面子が丸つぶれでした。こういったことからもその国ごとの慣習や考え方が違うのでよく勉強しておかないと相互理解はできません。