82歳になる出身大学ヨット部OBから「小笠原までヨットで連れて行ってくれ!」との要望があったが、八丈島から3日3晩の洋上航海に対して航海希望者が4名しか集まらなかった。 そこで、行く先を八丈島にしたら希望者が6名(但し全員70歳以上で最高齢:82歳、平均年齢74.5歳)となったので、梅雨前の5月末に決行するように計画した。
メンバーの年齢から夜間の航海はしないことを前提に、往路航程(葉山港→伊豆大島・波浮港→三宅島・阿古漁港→八丈島・神湊港)、復路航程(神湊港→阿古漁港→式根島・野伏港→葉山港)を、宿泊は各港で1泊(但し八丈島では3泊)を実施した。
1. 航海概要
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①往路航程特記事項 |
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<葉山出港前の情報で、黒潮の流れは八丈島の南方に流れており、八丈島へは平穏な航海であった。> |
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5月25日(葉山→波浮): 伊豆大島東岸到達までは穏やかな航海であったが、伊豆大島東岸に近づくと、三原山からの吹きおろしの強風と強い潮流による大波に揉まれた。 波浮港近くでは2m前後の横波があり、波浮港の入り口は狭い上に白い飛沫が上がっていたので、緊張を強いられる入港であった。 |
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5月26日(波浮→阿古): 平穏な航海であった。 三宅島の手前12,3海里でイルカの大群に囲まれた。 約15分間イルカが飛び跳ね、艇の周りを泳ぎ回るというイルカショーを堪能した。(下記写真) |
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5月27日(阿古→神湊): この日も海上平穏! 航行距離61海里(113km)、所要時間11~12時間を予定して、午前4時過ぎ(夜明け前)に出港。三宅島東岸からの日の出を洋上で見ながら、御蔵島の西岸冲合を通り、八丈島に一直線で南下した。10時過ぎに八丈富士が見え始めた。八丈島に近づくに連れ追潮に乗って、予定より2時間近く短い9.5時間で神湊港に着岸した。 |
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5月28,29日(八丈島泊): 28日:晴れ、レンタカーにて八丈島観光。 29日: 風雨強く、宿にて休養。 |
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②復路航程特記事項 |
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<黒潮が北上し八丈島と御蔵島の間を流れていたので、荒天での航海と長時間の緊張を強いられた> |
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5月30日(神湊→阿古):八丈島到着日から黒潮が北上し、八丈島と御蔵島の間に黒潮本流が流れているとの情報があった。天気予報は穏やかに晴れて風も弱いとのことであったが、天気の回復が遅れ、雨は止んだが10~11m/sの向かい風が吹いており、荒天準備をして出港した。港を出た途端大波に揺さぶられた。機走にて三宅島に針路を取ったが、風と3m前後の大波に阻まれ、艇速は3ノット前後(5~6km/h)であった。大波を頭から被ったが、水温が24,5°Cあり寒さは感じなかった。7:30時頃西の空に青空が見え始めると同時に強風が少しづつ弱くなった。セールを小さく張ってローリングを抑えて機帆走。9:00時頃御蔵島が見え始めると共に天候が回復してきた。その後、風が9m/s以下に弱まる共に風向も追い風になり艇速が上がった。阿古漁港に16:20時に着岸(所要時間11:5時間) |
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艇の左を通過する汽船も波に隠れる程の大波 |
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艇の右側の大波は頭から海水を降り注いだ |
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5月31日(阿古→式根島・野伏港):午前中雨だったが、セールを張らずにブームに雨避けテントを張って出港。 5時間の機走にて目的地に到着。 |
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6月1日(野伏港→葉山港): 約61海里の航程なので、4:30時に出港。新島・利島・大島の西岸を通り相模湾に流れ込む潮流に乗る針路を取った。出港時北東の向かい風であったが、波も小さく順調に足を伸ばした。相模湾は穏やかでまるで湖のごとき状態で、14:30時頃に葉山港に無事帰着した。 |
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式根島に向かう艇上。テント内で雨避け |
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葉山に戻ったメンバー。 黄色シャツが筆者 |
2. 今航海で特別の記憶として残った事項
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①イルカとの遭遇: |
イルカの大群との遭遇はこれまで、本州一周航海時の津軽海峡と高知への航海で室戸岬沖で経験したが、今回ほど艇の周りで踊ってくれたイルカの大群は初めてであった。 |
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②黒潮の美しさ: |
昔から黒潮のことを「黒瀬川」と呼称するが、実際スターンウェーブの色を見ると、海水の色が透き通った深い藍色で、スクリューの回転で発生した白い泡がその美しさを際出させていた。 |
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③黒潮の流れと波: |
黒潮は、本流の速いところで4~5ノット(約7~9km/hr)の速度で流れており、またその幅は約20海里位(35~40km)と言われている。
伊豆大島・三宅島・御蔵島・八丈島は直線状に並ぶ火山列島で、海底にも多数の火山跡と思われる浅瀬(と言っても水深100m前後)があり、西から東に流れる黒潮が浅瀬にぶつかり海上に大きな波を立てている。 今航海時のような風が強い時は波高が増長し、その波頭が崩れ、艇が大きく揺さぶられると共に大量の海水を浴びることになる。 皆艇から振り落とされないことと怪我をしないことに神経を遣い、これまでの数多い航海の中で一番長い時間緊張した航海であった。 |