新年を迎えて 無辺無題
新年明けましておめでとうございます。百八遍に亘り、人々を多くの迷いから目覚めさせるとして撞かれた除夜の鐘。余韻嫋嫋(じょうじょう)の妙音が呼び入れたこの佳き年。この折ならばこそ、夢もふくよかに膨らみます。軽やかに。
そこで、「ギザの大ピラミッド」が威風堂々の百四十六メートルの高さならば、「ワシントン記念碑」は五百五十五フィート五インチちょっきりすっきりした痩身(そうしん)のオベリスク。そのワシントンD.C.までの直線距離を「東京から10.92
Mm」などと随所で「メガメートル(十の六乗メートル)」のSI単位系で示して貰えると随分覚えやすいのでは。因みに、「ギザの大ピラミッド」は、流石にその完成から三千八百年余の永きに亘り、イングランド東部の「リンカーン大聖堂」中央塔に尖塔が付加され百六十メートルの高さまで伸びた西暦千三百十一年という節目まで終始一貫「世界に冠たる一番高い建造物」の栄誉を恣(ほしいまま)にしていました。ギリシャ人が天空に揺れ輝く星の塊を「gala(=ミルクの)xias(=名詞語尾)」と呼んだ天の川。太陽系から射手座方向のその中心までが三万光年。 上には上が在るもので、「人類が棲む銀河系」の外に在りながら地球から肉眼で望見できる「アンドロメダ銀河」が、二百三十万光年の超遠距離に位置するなどと聞くと、これこそ「見果てぬ夢」です。
海中で浮力に助けられて自重の束縛から解放された上、四肢が不要となった哺乳類のシロナガスクジラが三十メートル余の図体にも成ったかと思えば、最小種の哺乳動物は体長三十ミリのトガリネズミである現実。両者の格差は何と一万対一。鹿の仲間でアラスカに棲息するヘラジカの「ムース」が体重七~八百キロ余り、背丈が二メートルにも成り、左右両角の開きが百六十~七十センチという謂わば眼前にそそりたつ岩塊のような存在感であろうところ、原始的な反芻動物で東南アジアの熱帯林に棲むマメジカ(豆鹿・ネズミジカ)はその背丈僅か二十センチだと知るにつけても、「自然の摂理」の底知れぬ奥深さに自然に畏敬の念が深まるのを覚えます。爬虫類に至っては全長十六ミリの最小種ヤモリが2001年カリブ海の小島で発見されたとか。その種八十万種超とも言われる昆虫へ敬意を表して、現存の虫達には無断で胴長七十六ミリ、開翅長二百八十ミリの「アレキサンドラトリバネアゲハ」と呼ばれる蝶を彼らの総代に擬させて頂いたついでに、植物界の超のっぽ常緑超高木ユーカリの名を挙げた処で、のっけから心細かった手許のタネが遂に底を突きました。
新年を迎えながら、近年際立つ全地球規模の異常気象、地球温暖化等による著しい「環境変化」、北極の氷減少に起因すると言われるこの師走初めの北海道の現実の大雪、海水面の異常上昇現象が島しょ国住民の人々の日常生活まで脅かしているとも報じられ、自然環境の破壊は野生生物種の減少による「往年豊かであった生物多様性の喪失」を加速させております。年頭に当たり、「人間活動による自然への負荷の増加を抑制するキャンペーン」には小家族ながら家族ぐるみで極力協力することをあらためて目標に設定いたしました。その一方で、小さな生命体の生態も垣間見たいところから所蔵のOLYMPUS単眼顕微鏡に夢を託してまたぞろ微小生物観察の遊び場に彷徨(さまよ)い込みかけます。
よいお正月をお迎えなさられたことと拝察します。 御家の皆さま共々ご健勝とご多幸に満ち満ちたお年でありますようお祈りします。
永日
【参考文献】『宇宙の測り方 (The Measure of the Universe)(上)』
(アイザック・アシモフ著 金子務/古川博=訳 河出書房新社刊)